2011年9月18日例会
場所:仙台市中央市民センター会議室
時間:14:20−16:00

三太郎倶楽部読書会の例会は各地域の市民センター等の社会教育施設を会場として開催されていますが、
3月の震災で施設も被災したことによって、暫くの間休止しておりました。
今回は震災後初めての例会です。
普段は阿部次郎を始め、近現代の「名著」と呼ばれる作品を取り上げようという趣旨で例会を行っておりました。
しかし空前の大災害を受けた今、この現状のもと何ができるのか語りあおう!ということを主眼に据えまして、今回から

■関東大震災前後の阿部次郎の日記
■山下文男著『津波てんでんこ 近代日本の津波史』

の2冊を読んでゆくことにしました。

関東大震災発生時、阿部次郎は東京に妻子を残してヨーロッパ留学の最中でした。
ヨーロッパ時代の日記の中で震災の様子が書かれているのは数ページですが
当時のヨーロッパの風俗が伺えるような記述もありなかなか興味深い資料です。

『津波てんでんこ』は震災発生後間もない頃にマスコミに何度か取り上げられましたのでご存知の方も多いと思われます。
著者の山下文男氏は昭和三陸津波で被災されました。氏の故郷の大船渡市はかねてより
津波の被害の多い地域(今回の東日本大震災でも例外ではありませんでした)です。
氏は津波の恐ろしさ、津波被害の悲惨さを後世に伝えようと、この『津波てんでんこ』の他にも多数の作品を著されています。



最初に阿部次郎の日記を読みました。
阿部次郎は日記の中で外国語をしばしば使っています。関東大震災の時の日記も例外ではなく
(後世の人間から見れば別に日本語を使っても大勢に影響はないような箇所に)ドイツ語が使われている部分がいくつかあります。
しかしスペルミスが結構あるのはご愛嬌というところでしょうか。
(なお、外国語部分は主宰者が予習してきていますので読みと意味は例会でご説明しますのでご安心下さい)

 9月1日当日。次郎はイギリスのホテルに投宿中でした。日記の文中に
「朝方まだ寝ている頃に日本では大地震が発生して、妻や子どもたちが大変な眼に遭っていることは
夢にも思わなかった」という趣旨の文があります。
ご存知関東大震災はお昼前に発生しています。が、当時次郎がいたのはイギリスで、
日本とイギリスの時差(9時間)が如実に判るような記述になっていたところが興味深いところです。
 後に震災発生の知らせを受けた後、意外にも冷静さを保ち続けることができている自分を訝しむ記述が文中にあります。
大き過ぎる衝撃を受けた場合あまりにも現実感が乏しいことから、却って冷静さを保てている側面もあり得ることが
次郎の日記から伺えます。

今回の例会にご参加頂いた中に、津波の被害を受けた方がいらっしゃったのですが
(幸いご家族もご無事で今は内陸に引っ越されたそうです)その方も同様のご感想。
私自身も震災当日、頻発する強烈な余震に悩まされながらもあまりの事態の深刻さを信じることができず、
むしろ淡々と行動していた記憶があります。


日記に続いて『津波てんでんこ』を読みました。
新しい作品を取り上げる時には原則として序文(プロローグ)から読むことにしています。
そうすることによって作者がその作品で何を訴えたかったのかその概要を把握することができるからです。
特に今回取り上げた『津波てんでんこ』では、著者自身が津波の被災経験があるということもあり、
著者の思いがより強く表されていると思われましたので、是非取り上げたいところでした。

プロローグの箇所のみで既に、過去数百年にわたる国内外の津波とその被害の概要が紹介されています。
日本は島国・地震国・火山島であり、しかも仙台に住んでいる私たちにとっては
普段の生活の場からかなり近いところで
津波の被害が頻発していたのにも関わらず、
過去の津波とその被害についての知識が乏しいということに
改めて気付かされました。
今回の震災では仙台市も津波の被害を受けた訳ですが、
「仙台の海岸に津波が来る」ということ自体
まるで脳裏にも浮かばなかったという人は実はかなりいた
(他ならぬこの私がそうでした)と思われます。
いつも災害は突然ですが、災害発生の危険性を少しでも想定している場合と、
まるっきり脳裏にも浮かべない場合とでは実際に災害が発生した時
あらゆる側面で明暗が分かれる訳です。
この作品を通して参加者の方と震災と津波について色々と話し合う中で、
経験と知識の共有と伝承がいかに重要か考えさせられました。



次回の読書会は10月9日です。
今回に引き続き阿部次郎の日記と『津波てんでんこ』を読みますので
皆様こぞってご参加下さい!
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